対立する価値観と人生の本質的価値

価値観を活用する

自己嫌悪や自己否定の感情から抜け出す方法の一つに、「価値観の優先順位」に変更をかける、または切り替えるといったテクニックがある。

例えば、「自分の気に入らないところを改善したい」といった感情に支配されるよりも、「いま目の前にいる人のために何ができるか」といった目的へと自分自身の視点を切り替えることで感情に変容をもたらすことがそれに当たる。

他にも、毎日ジムに通うことすらも苦痛だと感じる場合は、そのジムに通うことにより最終的に何が得られるかを考えてみる。毎日の仕事に嫌気が差す場合は、仕事で出世することで何が得られるかを考えてみるのだ。

ジムの場合であれば、立派で姿勢良く若々しい肉体を手に入れることで異性にモテ、自尊心が大きく膨らむ情景をイメージし噛み締めてみる。

仕事の場合は、自分が希望する部署で気の合う仲間達との充実したビジネスライフや、手掛けてみたかった仕事、バリバリ稼いでアフターファイブには素敵なパートナーとの恋愛に花咲かせるシーンをイメージしてみるのも良い。

肉体改造でも勉強でも、スポーツでも仕事でも、自分自身が望む結果を手に入れるためにはいくつかのティッピングポイントを通過して行く必要がある。

ティッピングポイントというのは新しく始めた習慣が身に付きはじめ、努力による結果が成果として顕在化し始めるタイミングのことだが、行動の変容には1ヶ月、肉体的・生理的変容には3ヶ月、そして価値観や思考パターンの変容には概ね6ヶ月間ほどの時間がかかるとされている。

多くの人はこのティッピングポイントを通過し、自分自身が望んでいた成長曲線にイメージがフィットする前に、理想と現実とのギャップに耐えられなくなり努力が継続できなくなってしまう。

そんな時におすすめなのが、「価値観の優先順位」に変更をかけ、視点を切り替えるといった冒頭にて紹介したテクニックである。

人生の本質的価値に気付く

価値観とは自分が何に価値を見出しているのかを指し示す、人生における羅針盤的な役割を持つ。

なぜなら価値観というのは、あなたが「経験したい」と思うこと、またその反対に「避けたい」と思うことの総称であるからだ。この価値観が明確であればあるほどにあなたの人生は価値ある経験を追い続ける時間を増やし、逆に価値を感じられない経験に時間を浪費しないようになっていく。

しかし、ここで一つ価値観の取り扱いについて注意しなければならない点がある。それは、自分にとって「真に重要とする価値観」とは何かを見失ってはいけないということだ。

価値観には今挙げたばかりの「積極的に得たい価値」と「避けたい価値」に加え、「一次的価値」と「二次的価値」という二つのカテゴリーが別で存在している。

一次的価値というのは本質的な価値(目的)そのものであり、二次的価値とは経験を通じて得られる手段やステータスといった付加価値のことを指す。この際、一次的価値を見失い、二次的価値に視点がフォーカスし過ぎると多くの場合で物事の本質とその目的を見失い失敗することとなる。

例えば、人間関係の中において深い絆や愛、安らぎや安心といった本質的価値を手に入れるためには相応の時間がかかるものであり、こうした一次的価値というものは誰かと短絡的かつ短期的な関わり合いを持ったところでなかなか直ぐには手に入らないものである。

しかし、こういった心の底から大切だと思う一次的価値に従い、本質的な意義と目的を持って人生を生きていくことで、あなたは間違いなくそれを手に入れた時に何ものにも変え難い深い達成感を得ることとなる。

一方で、お金や恋愛、地位や学位、子どもや家庭といったように、手段としての二次的価値を手に入れることが人生の目的となると、例えそれを手に入れることができたとしても、必ずしもあなたは幸せにはなれないだろう。

だからこそ、自分自身が真に重要とする一次的価値とは何かを知り、それにフォーカスを絞った上で人生を歩んでいくことが重要となる。

―対立した価値観の先にあるもの

自分自身が持つ一次的価値を明確にすることの重要性を説明してきたが、それに加えて、先に紹介した「積極的に得たい価値」と「避けたい価値」について明らかにすることはそれと等しく重要である。

むしろ、自分にとっての積極的に得たい価値と避けたい価値が明確になることによって、一次的価値がより深いレベルで認識できるようになる。

積極的に得たい価値についての題材には、次のようなフレーズが良く用いられる。

愛・安定・挑戦・貢献・自由・成功・健康etc.

これらの価値について、自分自身が欲しいと思う順に順位付けしてみることで、自分が人生において何を重要視しているかがイメージしやすくなる。

一方で、避けたい価値としては

否定、怒り、挫折、孤独、無力、不満、失望etc.

といったものが挙げられる。こちらも得たい価値と同様に、自分自身の中で最も避けたい要素を順位付けしていき、あなたにとっての「最終的な価値」とは何かを把握する手立てとしてみて欲しい。

そして、これら二つの「積極的に得たい価値」と「避けたい価値」についてを順位付けしていくことにより、ある矛盾点に気付く時が来る。それが「価値観の対立」である。

つまりは、成功を手に入れたいと思う願望と、痛みを避けたいと感じる願望とがバッティングするという状況が生じてくるのだ。

しかしこれは、「練習することなく上達したい」「誰にも批判されることなく成功したい」と言っているようなものであり、実際には否定や批判を受ける覚悟無くして人生の成功は勝ち取れない。

価値観を明確にしていくことは、こういった人生の摂理に気付かせてくれるとともに、あなた自身に成功への覚悟を持たせるキッカケを与えてくれる。

本コラムでの学びを、是非あなたの成功曲線の先に控えるティッピングポイントを越えていくための原動力として欲しい。

この記事を書いた人

Yusuke Mori