たった1%の影響力

―1%の差が運命を大きく左右する

1%の成長を1年間(365日)続けると、その効果は37.8倍(1.01365=37.8)にもなるという計算結果は非常に有名な話だが、加えて1%の退化を1年間(365日)続けることで、その効果は0.03倍(0.99365=0.03)となり、この両者の力の差は1年を通じて1260倍の差を生み出すという結果を数学の世界では叩き出す。

実際、成功を手にする多くのプロアスリートや経営者というのは、新しく始めたことを効果が現れるまで継続する力に非常に長けていることは説明するまでもなく、実際に私が支援するクライアントの中でも、その努力に対する姿勢は面白いほどに二極化されていると言っていい(実際には8対2くらいだが)。

つまりは、コーチングにより得られた新しい習慣や思考法を着実に日々実行しているか、そうでないかの二極である。

コーチは魔法使いではないため、当然クライアント側が成果を挙げることに誠心誠意コミットしない限り望む結果を手に入れることは難しくなるわけであり、「こんなことをしたって」「今日1日ぐらい」といった様に、自分自身の努力の邪魔をする心のブレーキをクライアント自身が自ら外す努力をしない限りは、凌ぎを削り合うプロの世界で成果を上げていくことは相当に難しい。

なぜなら、経営の世界でもスポーツの世界でも「プロ」を名乗る以上は、皆すべからく努力しているからだ。「数字」という目に見えた結果を積み上げていくことがプロとしての何よりの証明であり、そのための努力を惜しんでいれば簡単に1260倍以上の差を1年間で叩き出し、ただでさえ努力を厭わないライバル達との間にできたその差を埋めるには相当の努力を要するようになる。

これも何の因果か、私自身が支援するクライアントはそのほとんどが、そんなプロの世界で勝負しているわけであり、それを支援する私自身も当然に数値的成果を求められるため、相当の緊張感を持って支援に当たる。

だからこそ、私は支援を引き受けクライアントと契約を交わす前には、必ず僕のセッションに対して強くコミットメントするよう約束してもらう。

矛盾しているように聞こえるかもしれないが、これはクライアント自身が自分の責任で変わらなければいけないことを自覚させるためのものであり、加えてどちらか一方が相手に対して依存することなく、お互いがプロとして自立した関係のもとに仕事を進めるためのものでもあるのだ。

しかし不思議だが、コミットが約束された上でスタートしたプロジェクトはほぼ100%の確率で、クライアントの心に劇的な変化と明確な数値的成果をもたらすこととなる。

しかも、これは年齢に関わらず、例え小学生を相手にしたとしても同様の結果が得られることが私自身の経験上明らかであり、加えて若い内から成果を上げることにコミットする習慣、言い換えれば上質な人間力が形成されていくことで、後の人生にも大きな好影響がもたらされると確信を持って断言できる。

―1%の法則を用いたチームビルディング

ちなみに、この1%の法則をうまく活用しチームの指揮を高めたという有名な実話が存在している。

その話の中心人物となるのが、米国NBAでロサンゼルス・レイカーズ、ニューヨーク・ニックス、マイアミ・ヒートの3チームを強豪に育て上げたことで有名な〝名将〟パット・ライリーだ。

ライリーは、好成績を納めながらも優勝を逃した自身のチームの選手達に対し「一人ひとりがそれぞれ5つのプレーエリアで1%ずつ向上すれば、チーム全体のレベルが上がり、来季は間違いなく優勝できるはずだ」と言葉をかけた。

このメッセージの秀逸さはその単純明快さにあり、このメッセージによってチームに所属する多くの選手が「それくらいならできそうだ!」と脳内イメージを膨らませ、実際に翌シーズンは各プレイヤーがそれぞれ5%ずつの向上を図り、計12名となるチーム全体で60%もレベルアップすることで、過去最高成績で優勝したという。

このような逸話からも、1日単位でも、1年単位でも、目的意識を持って1%ずつ成長を積み重ねて行けば、思いがけない成果を手に入れることは十分に可能だということに気付かされる。

1日で人生が劇的に変わることを期待してはいけないが、成功を心から信じ、正しい努力を積み重ねていくことで、あなたの人生は望んだ方向へと着実に向かって行くようになるはずだ。

この記事を書いた人

Yusuke Mori