現状を変えるために必要な意識

―常識を疑う

私が支援するプロアスリートやエグゼクティブといったクライアントの多くが、現状の自分に満足できずにいる。

より良い自分になりたい、今の嫌いな自分を変えたい、その根源的なエネルギーの性質に差はあるが、皆それぞれに「現状の自分に変化を起こしたい」と望んでいる。

このコラムを読んでいるあなた自身も、もしかしたら自分自身、もしくは自分の周りにいる誰かを変えたいと考えているのかもしれない。

それでは、現状を変えるために必要なこととは一体何か。

結論から言えば、今のあなた自身が持つ「常識」に変化を起こしていく必要がある。

常識とは、あなた自身が一切疑うことなく行っている日常のルーティーンや日頃扱っている言葉などがイメージしやすい例だと思う。

朝起きる時間や、通勤・通学で利用する目的地までのプロセス、アスリートであればショットを打つ動作フォームや使用している競技用具、ビジネスパーソンなら今用いている仕事の管理方法や営業メソッドなどといったように、既に当たり前として行われている自分の行動や思考パターンを何か一つでもいいから変えてみるのだ。

―常識が眠る場所

ところで、あなた自身が持つ「常識」は一体何処に潜在しているのかといえば、それは「無意識」の領域にある。

精神分析を創始したジークムント・フロイトに始まり、後にロン・ハバートにより完成させられた「意識・無意識」の心理構造図は非常に有名だが、彼らによれば人間は意識と無意識という2つの意識領域を持ち、それぞれの領域は「意識:3〜10%」「無意識90〜97%」でおおよそ支配されているという。

試しに〝意識〟して欲しいのだが、今あなたの右側には一体どのような景色が広がっているだろうか、確認していただきたい。

・・・どうだろう?

先ほどまでのあなたは私の綴った文章に意識を傾けていたわけだが、その間ずっと外界に存在していた世界の変化に意識を向けられていなかったのではないだろうか。

足の裏の感覚や、スマホを握る指の感覚、肌に触る空気感など、意識を向ければ簡単に感知できる五感から得られる情報も、一つのことに意識を向けるだけでそれ以外の全てがあなたの意識から消えて無くなってしまう。

それもそのはず、そもそも私たち人間の脳というのは一度に一つの物事へとしか意識を向けられない構造となっているのだ。

こんなシーンを思い出してみて欲しい、宿題で忙しい時に家族や友人に声をかけられた時、スポーツの練習中にボールを意識しながら新しいフォームにも意識を向ける時、仕事での商談中に別の案件でいきなり電話がかかってきた時・・・こんなことを考えただけでも頭がパニックに陥らないだろうか?このように、人間の脳内では常に一つの物事へとフォーカスが絞られており、自分が意識を向けている以外の情報は全て無意識の領域へとフェードアウトしてしまうわけだが、こういった現象から人間の意識領域の内の9割ほどが無意識により占められているとされている。

―無意識を塗り替える

このように人間の意識領域の内の9割以上が無意識により支配されていることに気が付くと、私たち人間が意識的に行っているつもりの行動や発言というものも、実は無意識に潜在する「価値観」やそこから生まれる「思考パターン」によって支配されていることが分かり始める。

物事の結果は行動により生まれるものだが、その行動は脳内でイメージ・思考された情報をもとに実際に再現される。

そして、そのイメージ・思考はあなたが持つ価値観、つまりは「自分なりの常識」によってつくり出される。

例えば、「中東の国は危険である」という価値観が日頃のテレビニュースを見た上であなたの脳内に強くインプットされていれば、あなたが次の海外旅行先に中東のカタールやドバイを選択する可能性は低くなる。

一方で、実際に中東の地に行ったことがあったり、仲の良い友人の一人が中東国の出身だったりすれば、次の海外旅行先に中東国が当然候補として含まれてくる可能性が高くなる。

もちろん、このどちらかが正解というわけではない。つまりは、無意識に潜んでいるあなたが持つ「常識」という存在は、行動に対してこれほどまでに強力な拘束力を持つという事実をここでは伝えたいのだ。

しかし、これも事実として合わせて伝えておきたい。

それは、成長が早く、成果を生み出し続けている人というのは100%「常識を疑う達人」であるということだ。

これは、コーチングの中で成果を上げてくれたプロアスリートやビジネスパーソン、他にも少なくとも年商1億以上を稼ぐ経営者たちと一緒に仕事をしてきた中でハッキリ分かっている。

こういった人たちは意図的または感覚的に自分自身の無意識にアプローチをかける才能に秀でており、成果を上げる上で不必要な常識を違和感として検知したら、それを変更することに対して圧倒的に固執(=コミット)する。

「成果」とは、競技パフォーマンスの向上やセールスの売り上げ、または自身のパーソナリティーやコミュニケーションの変容というようにそのニーズは多岐に渡るが、現状のままでいることよりも結果を出すための変化に固執できるという点は確実に共通している。

さぁ、あなたはどうだろう?

昨日までの常識を何か一つ変えてみることで、新しい世界を知り、新しい価値観がまた一つ手に入るかもしれない。

今日のコラムが、あなたの人生に対する気付きや転機となれば幸いだ。

この記事を書いた人

Yusuke Mori